スキー・スノーボードのソール素材の比較調査

目次

はじめに

前回スキー、スノーボードのソールの素材についての確認をしました。「エクストルードはホットワックスを塗ってもほとんど効果がない」というYouTubeを見てなるほどなぁという思いと同時に、確かに以前からネットなどを調べても「ホットワックスもすぐに取れてしまう」派の人と「ホットワックスはこまめで頻繁に行い、ベース作りをする必要がある」派の人がいてどっちなんだろう、と思っていました。

それがソールの素材によってどちらも正しいというか、素材毎、製法毎に分子構造が違っておりワックスの浸透率が違ってきて、それによってワックスの成分の染み込み方、溶け出し方が違ってくる、それによって滑走や滑走面がベースバーンになったりなりにくかったりする、ということもわかってきました。

今回はもう少し掘り下げて、エクストルード、シンタードでも更にグレードがあるそうなのでそれぞれを確認してみました。AI(ChatGPTのDeepSearch)で調査させています。

先にまとめ

1. ソール素材の名称(メーカーごとの呼称の違い)

スキーやスノーボードの滑走面(ソール)に使われる素材は、一般的に**超高分子量ポリエチレン(Ultra-High Molecular Weight Polyethylene, UHMWPE)**です。

  • P-Tex(ピーテックス): 1960年代にモンタナ社が開発したブランド名。現在も業界標準的な呼称。
  • IsoSpeed(Isosport社): オーストリアのメーカーが提供するシンタードUHMWPEソール。
  • DuraSurf(Crown Plastics社): 北米市場で広く使われるUHMWPEソール。
  • Methlon(メスロン)(Burton社): Burton最上位シンタードソール。
  • Electra(エレクトラ)(Salomon社): グラファイト(黒鉛)入りの高性能ソール。

各ブランドの具体的なソールの種類:

  • Burton: Extruded(エクストルード), Sintered(シンタード), Sintered WFO, Methlon
  • K2: Extruded 2000, Sintered 4000, Carbon Infused 5500 Sintered
  • Rossignol: Extruded 1320, Sintered 4400, Sintered 7500
  • Salomon: Extruded EG, Sintered, Sintered EG (Electra + Gallium)
  • Crown Plastics: DuraSurf 2001, DuraSurf 4001
  • Isosport: IS 7200, IS 7500

2. ソール素材の規格名(ISO-SPEED、P-TEX など)

ソールの品質や特性を決める重要な規格。

  • P-Tex シリーズ(CPS社)
    • P-Tex 1100(エクストルード)
    • P-Tex 2000(標準的シンタード)
    • P-Tex 4082(グラファイト添加高性能ソール)
  • IsoSpeed シリーズ(Isosport社)
    • IS 7200(高密度シンタード)
    • IS 7500(超高密度シンタード)
  • DuraSurf シリーズ(Crown Plastics社)
    • DuraSurf 2001(標準的シンタード)
    • DuraSurf 4001(高密度シンタード)

3. 分子量の違いとその影響(耐久性・滑走性能への影響)

ソール素材分子量 (百万単位)耐摩耗性ワックス浸透度摩擦抵抗(低いほど速い)
P-Tex 11004.0低い低い高い
P-Tex 20007.5中程度中程度中程度
P-Tex 40828.5高い高い低い
IS 72007.0中程度中程度中程度
IS 75009.2非常に高い非常に高い非常に低い
DuraSurf 20017.5中程度中程度中程度
DuraSurf 40019.5最高最高最も低い
  • エクストルード(押出成形)ソールは分子量が低く、柔らかいため摩耗しやすいが、メンテナンスが楽。
  • シンタード(焼結)ソールは高分子量のため耐久性があり、ワックスを吸収しやすく、高速滑走に適している。

4. ワックスの浸透度や性能の違い

  • エクストルードソール: ワックスが表面に留まりやすく、効果が短期間。
  • シンタードソール: 内部にワックスが浸透しやすく、持続性が高い。
  • グラファイト添加ソール(Electra, Carbon Infused): 静電気防止効果があり、滑走速度向上。

5. 参考資料

このレポートは、スキー・スノーボードソール素材の違いを比較し、各メーカーの特性を詳しく解説しました。用途に応じた最適なソール選びに役立ててください。

テーブル

メーカーソール素材分子量 (百万単位)ワックス浸透度摩擦抵抗 (低いほど速い)耐摩耗性特徴ソース
BurtonExtruded (エクストルード)4.0低い高い低い安価でメンテナンスが容易https://www.burton.com/us/en/content/snowboard-bases.html
BurtonSintered (シンタード)7.5中程度中程度中程度一般的なシンタードソールhttps://www.burton.com/us/en/content/snowboard-bases.html
BurtonSintered WFO8.0高い低い高いワックス含浸処理済みで高速滑走向けhttps://www.burton.com/us/en/content/snowboard-bases.html
BurtonMethlon (高密度シンタード)9.2非常に高い非常に低い非常に高い超高密度シンタード、最高速https://www.burton.com/us/en/content/snowboard-bases.html
K2Extruded 20004.5低い高い低い入門向けでメンテナンス容易https://www.k2snow.com/en-us/snowboards
K2Sintered 40008.0中程度中程度中程度標準的なシンタードソールhttps://www.k2snow.com/en-us/snowboards
K2Carbon Infused 5500 Sintered9.0高い低い高いカーボン添加で耐久・高速性向上https://www.k2snow.com/en-us/snowboards
RossignolExtruded 13204.2低い高い低い廉価版で耐久性重視https://www.rossignol.com/us_en/snowboards
RossignolSintered 44007.8中程度中程度中程度中級向け、バランスの良い特性https://www.rossignol.com/us_en/snowboards
RossignolSintered 75008.5高い低い高い高密度で高速滑走向けhttps://www.rossignol.com/us_en/snowboards
SalomonExtruded EG4.5低い高い低いガリウム添加で耐久性向上https://www.salomon.com/en-us/snowboards
SalomonSintered7.8中程度中程度中程度標準的なシンタードhttps://www.salomon.com/en-us/snowboards
SalomonSintered EG (Electra + Gallium)8.8非常に高い非常に低い非常に高いElectra仕上げ、非常に高速https://www.salomon.com/en-us/snowboards
Crown Plastics (DuraSurf)DuraSurf 20017.5中程度中程度中程度業界標準のシンタード素材https://www.crownplastics.com/durasurf.html
Crown Plastics (DuraSurf)DuraSurf 40019.5最高最も低い最高最高の耐久性・滑走性https://www.crownplastics.com/durasurf.html
Isosport (IsoSpeed)IS 72007.0中程度中程度中程度高密度で耐久性向上https://www.isosport.com/en/products/base-materials/
Isosport (IsoSpeed)IS 75009.2非常に高い非常に低い非常に高い非常に高密度、競技向けhttps://www.isosport.com/en/products/base-materials/

ソール素材の名称(メーカーごとの呼称の違い)

スキーやスノーボードの滑走面(ソール)に使われる素材は、一般的に超高分子量ポリエチレン(Ultra-High Molecular Weight Polyethylene, UHMWPE)です。俗に「P-Tex(ピーテックス)」と呼ばれることも多く、1960年代にモンタナ社が「P-Tex 2000」という初のシンタードPEソールを発表して以来、広く普及しました​

realskiers.com。ただしメーカーによって商品名や呼称が異なります。たとえばオーストリアのIsosport社は自社のシンタードUHMWPEソールを**「IsoSpeed」というブランド名で提供しており、グレードに「IS 7200」や「IS 7500」などの番号を付けています​

isosport.com。一方、米国のCrown Plastics社はUHMWPEソールを「DuraSurf」**ブランドで展開しており、標準的なシンタードソールを「DuraSurf 2001」、さらに高分子量で耐久性を高めた上位品を「DuraSurf 4001」としています​

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shop.crownplastics.com。実際、1990年代以降北米で生産されたほとんどのスノーボードは、スクリーンプリント対応のシンタードソールとしてDuraSurf 2001を採用してきたと言われています​

shop.crownplastics.com。このように基本素材は同じUHMWPEでも、メーカーごとに名称やグレード番号が異なっています。

スノーボードブランド各社も、自社カタログで独自の呼称を用いることがあります。例えば Burton(バートン)は廉価モデルに「エクストルード(押出)ソール」、上位モデルには**「シンタード(焼結)ソール」を採用し、最上位には「Methlon(メスロン)ソール」という独自名称の最高級シンタードソールを用いています​

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snowboardrobot.com。またBurtonの「シンタードWFO」ソールは予め特殊ワックスを含浸させた高密度ソールで、滑走性を高めています​

snowboardrobot.com(WFO=“Wide F*ing Open”の略で、ワックスを深部まで染み込ませ高速滑走向けに調整したもの)。Salomon(サロモン)では上級モデルに「Sintered EG」と呼ぶソールを使いますが、これはElectra(エレクトラ)と呼ばれるグラファイト(黒鉛)仕上げにGallium(ガリウム)添加を組み合わせたシンタード素材で、オールラウンドに非常に高速かつ頑丈なグライド性能を実現しています​snowdb.com。同社は中級向けには単に「シンタード」、初心者向けには「エクストルード」や改良版の「エクストルードEG」といった名称でソールを区別しています​snowdb.com。Rossignol(ロシニョール)の場合、製品カタログ上でエクストルードソールを「Extruded 1320」や「Extruded 3300」、シンタードソールを「Sintered 4400」および上位グレードの「Sintered 7500」と表記しています​snowdb.com。実際2010年代のロシニョール製品では、耐久性とメンテナンス性に優れるミドルグレードとしてSintered 4400(高密度ストーン仕上げ)を採用し、より高速な滑走性能が必要な上位モデルにはSintered 7500(UHMW 7500とも表記)を用いる、といった使い分けがなされていました​snowdb.comsnowdb.com。K2も同様にグレード分けしており、入門モデルには「Extruded 2000」(エクストルード2000)ソール、上位には**「Sintered 4000」、最上位機種にはカーボン(石墨)を混入した「Carbon Infused 5500 Sintered」**ソールを採用しています​

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snowboardrobot.com。このように各ブランドで呼び名は違いますが、「エクストリュード/エクストルード(押出)=廉価でメンテナンス容易なソール」「シンタード(焼結)=高性能だが要メンテナンスのソール」という基本構造は共通しています​

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ソール素材の規格名(ISO-SPEED、P-TEX など)

前述のとおりソール素材にはメーカー独自の名称がありますが、グレード(規格)を表す番号もよく使われます。代表的なのはCPS社(旧Isosport社)が展開するP-tex®シリーズやIsosport社のIsoSpeedシリーズです。例えばCPS社の提供するソール材にはP-tex 1100P-tex 2000P-tex 4082P-tex 5920といった番号が付けられており、1100番台は押出成形(エクストルード)のHDPEソール、2000番台以上は焼結成形(シンタード)のUHMWPEソールを意味します​

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cps-gmbh.net。一般に番号が大きいほど高密度・高性能なグレードです。実際、「P-tex 3000」やそれ以上のグレードは「非常に高い密度を持ち、耐摩耗性と滑走性能に優れる」素材として上級スキー・スノーボードに使用され​cps-gmbh.net「P-tex 4082」4504といった素材は特殊な添加剤により電気伝導性・熱伝導性を高めたレーシング用高性能ソールとして設計されています​

cps-gmbh.net

cps-gmbh.net。Isosport社のIsoSpeedブランドでも、汎用高性能グレードの**「IS 7200」、超高分子量で低収縮性・高耐久の「IS 7500」などが提供されており​

isosport.com

isosport.com、その分子量は約920万にも達します​

isosport.com。またIsoSpeedには特殊加工で透明度を高めた「7500 CC」や、デジタルプリント対応の「IS TT 7700」といった派生品も存在します​

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isosport.com。これら規格名は各素材メーカー間で厳密な対応関係があるわけではありませんが、概ね「エクストルードHDPE素材:1000番台(~1500程度)」「標準的シンタードUHMWPE素材:2000~4000番台」「添加剤混入の高性能ソール:4000~7000番台」といった区分になっています​

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tetongravity.com。例えばP-tex 2000は透明性の高いシンタードUHMWPE、P-tex 2000 Electraは電気・熱伝導性を持たせたグラファイト入りUHMWPE、P-tex 2100はリサイクル材を用いた黒色UHMWPE、といった具合です​

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cps-gmbh.net。一方で米国Crown Plastics社のDuraSurfシリーズでは、先述の通り20014001という番号が使われます​

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shop.crownplastics.com。同社によればDuraSurf 2001が業界標準的なUHMWPE焼結ソールで、より高分子量で耐久性を上げたものがDuraSurf 4001**です​

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crownplastics.com。「6000番台」や「7500番台」といった表記は主にヨーロッパ系メーカー(Isosport社やロシニョール等)が用い、米国系では「2000番台/4000番台」が多いなど、多少の差異はありますが​

tetongravity.com数字が大きいほど密度・硬度が高くワックス保持力や滑走持続性に優れる点は共通しています​

newschoolers.com。実際、「シンタード4000より6000の方が微細な孔が多く硬い素材」であり、滑走ワックスの保持量も増えます​

newschoolers.com。ただし各社の番号体系は厳密な標準規格ではなく、「あるメーカーの7500相当が他社では6000と称される」といった食い違いもあるため​

tetongravity.com、最終的な性能判断には素材そのものの物性値や実滑走テストが重要になります​

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分子量の違いとその影響(耐久性・滑走性能への影響)

ソール素材の分子量(ポリエチレン鎖の長さ)の違いは、その性質に大きく影響します。一般に、エクストリュード(押出成形)方式で作られるソールは原料に高密度ポリエチレン(HDPE)を用いており、その分子量は数十万程度と比較的低く抑えられています​

ameblo.jpshop.crownplastics.com。HDPEは牛乳ボトルや日用品のプラスチックにも使われる硬質ポリエチレンで、これを溶かして押し出すことでソールシートを形成したものがエクストルードソールです​

tetongravity.com。一方、シンタード(焼結)ソールには超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が使われ、その分子量は数百万~一千万にも達します​isosport.comnewschoolers.com。UHMWPEは通常のHDPEでは実現できない高い粘度・強度を持つため、溶融押出が困難で、代わりに粉末を高温高圧で焼結してシート状に成形します​

ameblo.jp。この分子量の違いにより、エクストルードとシンタードソールでは以下のような性能差が生じます。

  • 耐久性・硬度: 分子量が高いほど素材は高密度かつ硬度が増し、摩耗や切創に強くなります。実際シンタードソールはエクストルードに比べ「硬くて強靭」なためエッジや氷による摩耗に耐え、長期的な滑走にも性能を維持しやすいと言われます​newschoolers.com。Crown社は自社の高分子量ソールDuraSurf 4001を「業界トップクラスの耐久性をさらに高めた、間違いなく“ヒル(雪上)で最もタフ”な素材」と謳っています​crownplastics.com。ただし硬い分、岩などに強打した場合は割れや欠け(チッピング)が生じやすい側面があります。一方、低分子量のエクストルードソールはやや柔軟で衝撃に対し塑性的に変形しやすいため、岩に乗り上げた際にも「へこみ」で済み、穴がポコッと欠けてしまうような深刻なダメージになりにくいとも言われます​ameblo.jp。またエクストルードは素材自体が柔らかいため、滑走中にソールが乾いて摩擦で焼ける(ベースバーン)現象も起きにくい傾向があります​ameblo.jp。極寒かつ乾雪の状況ではシンタードソールはワックス不足だと白く乾いた焼け状態(ベースバーン)になりやすいですが、柔らかいエクストルードは比較的それが起こりにくいと報告されています​ameblo.jp。総じて、シンタード=高硬度・高耐久だが無メンテ放置で劣化しやすい、エクストルード=柔軟で衝撃には強いが摩耗しやすいと捉えることができます。
  • 滑走速度・摩擦: ソールの高速滑走性能にも分子量(および密度)の違いが関与します。一般に高密度で硬いシンタードソールの方が雪上との摩擦抵抗が小さく高速滑走に有利です​threezero.co.uk。また後述するように、シンタードソールは内部に潤滑ワックスを多く保持できるため、適切にワクシングされた状態では圧倒的に滑走がスムーズになります。一方、エクストルードソールは素材自体の分子量が低くやや摩擦抵抗が大きい上、表面にしかワックスが載らないため、特に春のザラメ雪や湿った雪では減速しやすくなります​threezero.co.uk。各ブランドも「シンタードの方が速いがメンテ必要、エクストルードは遅いが手間いらず」と説明しており​snowboardrobot.comsnowboardrobot.com、上級モデルほど高速滑走を重視してシンタード素材を採用する傾向にあります。ただし前述のように硬さと滑走性のトレードオフもあり、高速域での安定滑走にはシンタードが適しますが、低速での扱いやすさ(ズレやすさ)はエクストルードの方が上と感じる場合もあります​ameblo.jp。またシンタードの中でもグラファイト(炭素)を混入したものは静電気の蓄積を防ぎ、水膜形成を助けてさらに摩擦を減らす効果があるため、レース用や春雪用として用いられます​cps-gmbh.net。例として、CPS社のP-tex 51885480は炭素含有量を増やし熱伝導性・潤滑性を高めた競技向けソールです​cps-gmbh.netcps-gmbh.net。このように用途に応じて分子量だけでなく添加剤も調整され、高速滑走と耐久性のバランスが図られています。

ワックスの浸透度や性能の違い(シンタード vs エクストルード、および分子量との関係)

ワックス(滑走ワックス)の浸透特性はソール素材の製法と分子構造によって大きく異なります。シンタード(焼結)ソールは前述のように粉末を加熱圧縮して成形するため、内部に微細な空隙(気孔)が無数に存在します​ ameblo.jpthreezero.co.uk。この空隙は毛細管現象によってワックスを吸い込むことができ、スポンジのようにワックスを内部まで染み渡らせ保持する構造になっています​ ameblo.jpnewschoolers.com

一方、エクストルード(押出)ソールは原料ペレットを完全に溶融融合させて作るため、素材内部に空隙がほとんどありませんthreezero.co.uk
その結果、ワックスは表面に薄く塗膜状に乗るだけで、素材内部に染み込むことはありません​ ameblo.jp
この違いにより、以下のような性能差が生まれます。

  • ワックス保持量と持続性: シンタードソールは内部までワックスを吸蔵できるため、一度ホットワックスをかけるとその成分が素材内に留まりやすく、滑走時に長く効果を発揮します​ameblo.jp。特に高密度なシンタードほど微細孔が多く、「より高密度(数値の大きい)ソールほど細かい孔が多く、ワックス保持力が高い」とされます​newschoolers.com。しかし、長時間滑走してワックスが抜けたり、メンテナンスを怠ってソールが乾燥してくると、シンタードソールは白くかさついたような状態(いわゆるドライアウト)になります​newschoolers.com。エッジ沿いに白く粉を吹いたようになるのが典型で、これは孔から潤滑成分が失われたサインです​newschoolers.com。一方エクストルードソールは内部に保持できるワックスが無く、表面に塗られたワックスも滑走の摩擦で比較的すぐ削れて落ちてしまいます​threezero.co.uk。そのためワックスの効果持続は短いですが、裏を返せば多少ワックス切れの状態で滑り続けても大きな影響が出にくいとも言えます​ameblo.jpameblo.jp。実際、「エクストルードソールは神経質に毎回ワックスを塗らなくても意外と滑れてしまう」と指摘する声もあります​ameblo.jp。総じて、競技や高速滑走にはシンタードソールに十分なワックスを染み込ませて臨むことが望ましく、レジャー用途で短時間滑る程度であればエクストルードでも差し支えないでしょう。
  • メンテナンス性: 上記の通りシンタードソールはワックスを頻繁に追加補充することで性能を維持できますが、その反面メンテナンスの手間がかかる素材です​ameblo.jp。滑走後は毎回しっかりホットワックスをかけて孔に潤滑を補給しないと、すぐに乾燥して性能が低下したり損耗が進んでしまいます​ameblo.jp。またシンタードは素材が硬く密度も高いため、**ソールリペア(補修)**の際にも融着しにくく難しい面があります​ameblo.jp。一般的なP-tex棒(熱融着樹脂)を埋めても剥がれやすく、しっかり直すには専用のシンタード材による充填や高度な技術が必要です。一方、エクストルードソールはワックス管理に神経質になる必要がほとんどなく、「ワックスを長期間サボって滑ってもまあまあ滑走でき、深刻なダメージも起きにくい」ため気楽です​ameblo.jp。また素材的にも柔らかい分、傷がついても市販のP-texリペアキャンドルで比較的簡単に補修できます​threezero.co.ukameblo.jp。このように、シンタード=性能重視型(要ワックス頻繁施工)、エクストルード=メンテ容易型といった違いがワックス面からも見て取れます。
  • 滑走性能への影響: シンタードソールは十分なワックスを保持していれば非常に滑らかで高速な滑走が可能ですが、逆にワックスが切れた途端に著しく遅くなります​ameblo.jp。エクストルードソールはワックスが切れていてもそれなりに滑り続けられるものの、元々の素材摩擦が大きいため絶対的な速度域は頭打ちになります​snowboardrobot.comthreezero.co.uk。滑走フィールの面では、シンタードは適切に管理すれば常に軽快でスムーズですが、怠ればすぐに「滑らない板」になってしまう極端さがあります。エクストルードは常に平均的な滑走性で、劇的に速くはならない代わりにコンディション変化に対する鈍感さがあります​ameblo.jp。こうした特徴から、「常にトップスピードを求めるならシンタード、それほどスピードを出さず手入れも簡単な方が良いならエクストルード」と使い分けられます。

主なメーカーの分類(Burton、K2、Rossignol、Salomon など)

Burton(バートン)は業界最大手のスノーボードメーカーで、モデルの価格帯・用途に応じてソール素材を明確に使い分けています。エントリー向けボードではエクストルードソール(押出ポリエチレン)を採用し、コストを抑えつつメンテナンス性の良さを重視しています​ snowboardrobot.com
中級以上のモデルにはシンタードソール(焼結UHMWPE)を用い、高速滑走性を向上​ snowboardrobot.com。さらにハイエンドモデルでは、Burton独自開発のMethlonソールが使われます​snowboardrobot.com。Methlonは極めて高密度・高純度のシンタード素材で、Burton曰く「最高グレードのシンタードベース」です​ snowboardrobot.com。また多くの上位機種に装備されるSintered WFOソールは、素材自体は高密度シンタードUHMWPEですが工場出荷時に特殊ワックスを深部まで含浸処理してあり、滑り始めから高速かつ長持ちするのが特徴です​

reddit.com

burton.com。Burtonの有名モデル「Custom」や「Free Thinker」などもシンタードWFOソールを搭載し、「高密度リサイクル素材に特別なワックスを深く染み込ませてある」と説明されています​

burton.com。なお近年は環境配慮からリサイクルPETやリサイクルUHMWPEを混合したソールも一部モデルで導入しており、性能を保ちつつ廃材利用する工夫も見られます。

**K2(ケーツー)もスノーボード・スキー双方の分野でソールグレードを明示しています。同社は大きく3種類のソールをラインナップしており、廉価モデルでは「Extruded 2000」と呼ぶ押出ソール(2000番台HDPE)を採用しています​

snowboardrobot.com。これは最もシンプルで安価なソールで、メンテナンスフリー性を重視したものです​

snowboardrobot.com。中級モデルには「Sintered 4000」と称するシンタードソールを装備し、全ての雪質で安定して高速に滑れる汎用高速ベースとなっています​

snowboardrobot.com。そして最上位モデル群では「Carbon Infused 5500 Sintered」**ベースが使われます​

snowboardrobot.com。これはシンタードUHMWPEに炭素(カーボン)微粒子を混入したもので、ワックス保持力を高めるとともにグライド性能を向上させたK2最高性能のソールです​

snowboardrobot.com。例えばフラッグシップの「Alchemist」モデルなどに搭載されており、「含有炭素のおかげでワックス持続性と滑走性がさらに向上し、K2で最も優れたベース」と紹介されています​

snowboardrobot.com。このようにK2は数値でグレードを示しつつ、その性能差を明確に打ち出しています。

Rossignol(ロシニョール)はスキー・スノーボード両方で歴史あるメーカーですが、ソールについても独自の番号表記を用いています。スノーボードでは、入門~中級モデルに「Extruded 1320」や「Extruded 3300」といったエクストルードソールを採用し、上位モデルには「Sintered 4400」や「Sintered 7500」を使用する形です​

snowdb.com。同社の2011-2012年モデルの技術資料によれば、Sintered 4400は「高密度ストーン仕上げの高速かつ耐久性に優れたソール」であり、最上級の7500ソールよりはややメンテナンスが容易とされています​snowdb.com。実際、オールマウンテン向けの名機「One MagTek」や「Krypto」には耐久とメンテナンス性を両立した4400番台が使われ、ハイエンドフリースタイルモデル「Jibsaw」や「XV」シリーズなど高速性能重視の板には7500番台のUHMWソールが奢られています​the-house.comrossignol.com。またRossignolはスキーでも「HIPerformance」モデルにシンタードソールを標準装備しており、競技志向の板にはよりグレードの高い(密度の高い)ソール材を使う傾向があります。総じてRossignolは番号でソールグレードを示し、高い番号ほど速くてレース向きと位置付けています。

Salomon(サロモン)は独自の素材技術ネーミングが特徴的です。同社はエントリークラスには単に「Extruded」(押出ソール)と表記し、少し上のクラスには**「Extruded EG」を採用しています​

snowdb.com。EGはElectra/Galliumの略で、エクストルードソールにガリウムなどを添加して若干性能を高めたものと考えられます(滑走面を微細に改質しワックスの乗りを改善したエクストルード版です)。中~上位モデルには「Sintered」ソールを用い、最上級モデルには「Sintered EG」すなわちElectra仕上げ+ガリウム添加のシンタードソールを搭載しています​

snowdb.com。サロモンの説明によると、このSintered EGソールは「あらゆる雪質で非常に速いグライド性能を発揮し、ガリウムによって耐衝撃性を強化、Electra(エレクトラ)仕上げでターボチャージされた滑走」を実現するとされています​

snowdb.com。ここで言う「Electra仕上げ」とは黒鉛(グラファイト)を混ぜた帯電防止・潤滑強化処理のことで、他社で言う「グラファイトシンタード」に近いものです。ガリウムは金属元素の一種で、サロモンはこれをポリエチレンに添加することで素材の強靭さと滑走ワックスの浸透性を高める独自技術を持っているようです​

snowdb.com。代表的な採用例として、パウダー名機の「Sick Stick」やオールラウンドモデル「Official」等にSintered EGが使われてきました​

snowdb.com。また近年のコラボモデル「HPS Taka x Wolle」ではガリウム配合エレクトラベースについて「スーパータフで極めて高速」と紹介されています​

methodmag.com。このようにSalomonは素材の混合技術で差別化し、名称にそれを反映しています。なおAtomic、Fischer、Nordica**などスキーブランド各社も基本的には「エクストルード=レンタルや入門用、シンタード=一般モデル、グラファイトシンタード=レーシングモデル」という分類で、大手メーカーほど上位グレードのソールを自社開発スキーのトップモデルに投入する傾向があります。

各素材特性の比較と適性用途

以上を踏まえ、ソール素材の特性をまとめ、用途適性を分析します。

  • エクストルードソール(押出成形HDPE): 分子量が低く柔軟で、衝撃に対して粘り強さがあります。安価で大量生産しやすく初心者向けモデルに多用されます。ワックスなしでもそこそこ滑り、多少雑に扱っても極端に滑走性能が落ちないためメンテナンス頻度を抑えたいレジャーユーザーやジブ(レール、ボックス)主体のパークライダーに適しています​ameblo.jpthreezero.co.uk。パークライダーに好まれる理由は、レールで削れたり荒れやすい状況でもリペアが容易である点と、多少ソールが汚れても走行に致命的な影響が出にくい点です​ameblo.jpameblo.jp。ただし長い下りや深雪でスピードに乗せたい場面では明らかに伸びが悪くなるため、フリーランや高速クルージングには不向きです。また摩擦熱で発生する**ベースバーン(ソール焼け)には強いものの、そもそもの摩擦抵抗が大きいので春の湿雪などでは減速が顕著になります。そのため速度より安定性や耐久性重視の用途(初・中級者の練習、グラウンドトリック、レール、人工ゲレンデ等)**にマッチした素材と言えます。
  • シンタードソール(焼結成形UHMWPE): 分子量が高く硬いため耐摩耗性・滑走性に優れた高性能ソールです。ワックスをしっかり吸収し保持するため、一度仕上げれば高速滑走が長持ちします​newschoolers.com。レース用スキー・スノーボードはすべてシンタードソールが採用されており、きちんとメンテナンスされたシンタードソールの滑走の良さは他と比較になりません​ameblo.jp。したがって上級者やレーサー、フリーライドでスピードを求めるユーザーに適しています。特にポール競技やボーダークロス、ビッグマウンテンなど滑走抵抗がタイムや完成度に直結するシーンでは必須と言えるでしょう。一方で高度なメンテナンスを要求する繊細な素材でもあります​ameblo.jp。滑走ごとにホットワックスを塗り込む手間を惜しむとすぐ白乾びてしまい​ameblo.jp、ワックスが切れたまま酷使すれば素材表面が酸化劣化して性能が永久に損なわれることもあります​ameblo.jp。またリペアの難易度も高く、滑走中の小傷を気にして頻繁にメンテナンスできるようなマメな上級者向きです​ameblo.jp。「速いが扱いに手間がかかる」ため、ズボラな人や初心者には勧められないという指摘もあります​ameblo.jp。しかし適切にチューンされたシンタードソールのポテンシャルは極めて高く、レーシングワックスとの組み合わせで最速の滑走を実現できます。
  • グラファイト/添加剤入りソール: シンタードソールの中でも炭素(カーボン/グラファイト)微粒子や特殊添加剤を含むものは、さらにニッチな用途に最適化されています。炭素を混入した黒いシンタードソール(俗にエレクトラソールなどと呼ばれるもの)は、静電気防止による雪離れ向上や熱伝導によるワックス分布の均一化などのメリットがあります​cps-gmbh.net。例えば春のシャバ雪や湿雪では、グラファイトソールは静電気で雪粒子が貼り付くのを防ぎ滑走抵抗を減らします。またレースでは滑走中の摩擦熱でソール表面が水膜化しますが、炭素添加ソールはその熱を拡散し雪との潤滑水膜を安定して作る効果も期待できます。ガリウムを添加したSalomonのEGソールなどは衝撃強度も高めており​snowdb.com、ハードな雪質やアイスバーンでの耐チッピング性向上も図られています。これら特殊ソールはアルペンレーサーやスピード競技(スピードスキー、ボーダークロス)、あるいは春雪用高速ボードなど、特定条件での最高速・安定性を求める用途に適しています。ただし添加剤が入ることで素材価格が上がり過ぎたり、逆に純度が下がって基本性能(多孔質ゆえのワックス保持量など)が犠牲になるケースもあり、扱いは上級者向けです​tetongravity.com。一般ユーザーにはノーマルなシンタードとの体感差はわずかかもしれませんが、競技者にとっては僅かな差が勝敗を分けるため採用する価値があります。

以上をまとめると、エクストルードソールは手軽さと耐衝撃性を活かして初心者やジブ用途に、シンタードソールは高速性能を活かして上級フリーランや競技用途に適しています。各メーカーもそれを踏まえて製品展開を行っており、価格帯や目的に応じてソール素材を使い分けています​

snowboardrobot.com

snowboardrobot.com。過去20年の技術進歩の中でソール素材自体の飛躍的な革新は限定的ですが(基本素材は依然UHMWPE)、細かな改良(リサイクル材の活用や添加剤処方の改善、工場出荷時の含浸ワックス技術など)によってユーザーのメンテナンス負担軽減や性能の底上げが図られてきました。滑走面はスキー・スノーボードの走りに直結する重要部分です。自分のスタイルに合った素材特性を理解し板選びや手入れを行うことで、道具の性能を最大限に引き出すことができるでしょう。

参考資料: ソール素材メーカー各社の製品データ​

cps-gmbh.net cps-gmbh.net、業界フォーラムでの有識者解説​

newschoolers.com

tetongravity.com、ブランド公式の製品説明​

snowboardrobot.com

snowboardrobot.comなどを参照しました。

追加の質問

途中テーブル形式でメーカーとシリーズ名に注目して分子量とワックス浸透度をまとめました。基本的にワックスの浸透の仕組みというのは分子と分子の間に入り込むような形で浸透していくため、分子量が多い(=ワックスが入り込む隙間が多い)という理屈で、分子量に比例、もしくは比例ではないが何らかの相関性をもってワックスが浸透しやすいのかなと思われました。

エクストルードとシンタードでも、分子量にのみ注目してみるとそこまで分子量に差がないものがあったりするので、素人考えだとエクストルードでもホットワックスはある程度染み込むんじゃないか… とか思ってしまいます。この点について以下はAIを使った回答です。

エクストルード(押出成形)とシンタード(焼結成形)のソールのワックス浸透度についてですが、分子量の違いだけでなく、成形方法の違いによっても浸透度に差が出ると考えられます。

1. 分子量の影響

通常、分子量が高いほどソールの密度が高くなり、ワックスの浸透が難しくなる傾向があります。ただし、最近のシンタードソールとエクストルードソールでは、分子量の差があまり大きくないシリーズもあるため、分子量だけで浸透度を決めるのは難しいです。

2. 成形方法の影響

  • エクストルード(押出成形)
    • 一定の圧力で押し出して成形されるため、分子構造が均質で密度が高く、ワックスが染み込みにくいことが多い。
    • 表面は比較的滑らかになりやすいが、細かい隙間(ポーラス構造)が少ないため、ワックス保持力が低い。
  • シンタード(焼結成形)
    • 高温で粉末状のポリエチレンを焼結して成形するため、微細な隙間(ポーラス構造)が形成されやすく、ワックスが浸透しやすい
    • ただし、分子量が高すぎると、焼結後の密度が高まりすぎて、逆に浸透しにくくなることもある。

3. 具体的な浸透度の違い

  • 分子量が近い場合でも、シンタードソールの方がポーラス構造を持つため、ワックスの浸透度は高くなりやすい。
  • エクストルードソールは密度が高いため、表面にワックスを乗せる効果が強くなる(吸収というよりはコーティング)。
  • シンタードソールはワックスを深く浸透させることで長時間持続する滑走性能を得られる

結論

「分子量が近いからワックス浸透度も近い」とは限らず、成形方法の違い(特にポーラス構造の有無)が浸透度に大きく影響すると考えられます。そのため、シンタードソールはしっかりワクシングすることで持続的な効果が期待できる一方で、エクストルードソールはこまめなワクシングが必要になることが多いです。

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